産直で見つけた、無農薬レモン
先週の休日に、近くの産直で和歌山県産の無農薬レモンを見つけました。
葉こそついていなかったけれど、まだ少し青みを含んだような自然な色をしていて、
手に取ると爽やかな香りがふわりと立ちのぼってきました。
SNSで見かけた「レモンシロップ」を作ってみたくなって、
氷砂糖とはちみつを買って帰ることに。
薄く切ったレモンをガラス瓶に一枚ずつ並べていく時間は、
思いのほか静かで、心が落ち着きました。
氷砂糖のカランコロンという音がとても心地よかった。
一晩経つと、氷砂糖がすっかり溶け始めて、嵩もずいぶん減っていました。
蓋を開けると、甘さをまとった柑橘の香りがふわっと広がります。
台所で、ふと『檸檬』を思い出す
その瞬間、不意に梶井基次郎の『檸檬』のことを思い出しました。
「えたいの知れない不吉な塊に押しつけられている」――。
かつて、私は高校でこの作品を教えていました。
教壇に立ちながら「不吉な塊って、何だと思う?」と生徒たちに問いかけていたころの自分。
あのころの私は、どちらかといえば「文学を説明する側」だったと思います。
でも今こうして、台所でレモンの香りを吸い込んでいると、梶井が描こうとした感覚が、
少しだけ身体でわかる気がしました。
重たい疲れや、うまく言葉にならない閉塞感。
それでも、鮮やかな色や香りが、そういうものをほんの少しだけ軽くしてくれる瞬間がある——
そういうことなのかもしれない、と。
そういえば『文豪ストレイドッグス』に登場する梶井基次郎は、
「檸檬爆弾」という異能を持っていますね🍋
このコミックのおかげで、梶井基次郎を知った女子高生は
少なくないのではないでしょうか?

柑橘の苦みと透明感
梶井基次郎の『檸檬』は、さだまさしさんの同名曲にも影響を与えたと言われています。
青春や喪失感、二度と戻らない時間へのまなざし——
あの歌にも、どこか柑橘のような苦みと透明感があります。
実は私、学生のころにその名曲『檸檬』に惹かれるようにして、
御茶ノ水を訪れたことがありました。
目的地は湯島聖堂。
江戸時代に儒学を学ぶためにつくられた学問所で、
「大学の原点」とも呼ばれる場所です。
もっともその日は閉館していて、中には入れなかったのですが…
足を棒にして、やっとのことでたどりついたのに!
それでも私は、聖橋の上からしばらく電車を眺めていました。
「快速電車の赤い色」の中央線と、「各駅停車のレモン色」の総武線。

田舎の大学に通っていたあのころの私には、東京という街そのものが、
どこか文学の匂いをまとっているように感じられたのだと思います。
そして——今思えばずいぶん気恥ずかしい話なのですが——
近くの八百屋でレモンをひとつ買い、橋の上から本当に放ってしまいました。
食べ物を粗末にしてすみません。
そして神田川を汚してしまって申し訳ありません。
若気の至りとはいえ、本当に反省しています。
最近知ったのですが、この『檸檬』が流行した時期に、多くの人がレモンを聖橋から神田川へ…
そしてさだまさしさんが駅員さんにこっぴどく叱られたのだとか!
今にして思えば、あれが私にとって最初の「聖地巡礼」だったのかもしれません。
アロマセラピーにもなるレモンの効能
アロマセラピーの世界では、レモンの香りには気持ちを切り替えたり、
心を軽くしたりする作用があると言われています。
確かに、台所いっぱいに広がる香りをゆっくり吸い込んでいると、
少しだけ呼吸が深くなる気がしましした。
ビタミンカラーのレモン色を見ていると、なんだか活気が湧いてくるような…
教壇を離れた今、私はようやく『檸檬』を「知識」としてではなく、
自分自身の感覚として読めるようになったのかもしれない——
そんなことを、レモンシロップの瓶を眺めながら、ぼんやりと思いました。
来週あたりには、炭酸水で割ってさわやかな初夏の味覚を堪能できるかな?🍋
ー癒庵ー

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